強迫性障害とは

<強い「不安」や「こだわり」によって日常に支障が出る病気です>

戸締まりや火の元を何度も何度も確認しても安心できなかったり、特定の数字にこだわるあまり生活が不便になったりしている場合は「強迫性障害」かもしれません。
強迫性障害は不安障害の一種です。
例えば、手が細菌で汚染されたという強い不安に搔き立てられて、何時間も手を洗い続けたり、
肌荒れするほどアルコール消毒を繰り返すなど、明らかに「やりすぎ」な行為を伴います。
世界保健機関(WHO)の報告では、生活上の機能障害を引き起こす10大疾患の一つに挙げられています。

<病気だと気付かない患者さんも多い>

国内では、どのくらいの割合で強迫性障害患者さんが居るのかはまだ完全には明らかになっていません。
日本の精神科外来では、多くても4%前後の報告があるに過ぎません。
ただしこれは、強迫性障害になっている人が少ないという意味ではなく、障害を性格の問題だと捉えて受診せずにいる人や、精神科を受診することに躊躇いがあって、
日常の不便を我慢している人が居るのではないかと考えられています。

<治療すれば治すことができる病気>

発症には性格、生育歴、ストレスや感染症など、多様な要因が関係していると考えられていますが、
なぜ強迫性障害になるのか原因ははっきりとは分かっていません。
しかし、なぜ症状が続き、何が影響して症状が悪化するかなどは解明が進んでいる部分もあり、
積極的に治療に取り組めば治ることも可能な病気となっています。

強迫性障害のサイン・症状

「強迫観念」と「強迫行為」の2つの症状があります

強迫観念とは、頭から離れない考えのことで、その内容が「不合理」だと分かっていても頭から追い払うことができません。
強迫行為とは、強迫観念から生まれた不安に搔き立てられて行う行為のことで、
自分で「やりすぎ」「無意味」と分かっていてもやめられません。

<代表的な強迫観念と強迫行為>

・不潔恐怖と洗浄
汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯を繰り返したり、ドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを恐れて、触れない。

・加害恐怖
誰かに危害を加えたかもしれないという不安が心を離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する。

・確認行為
戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手で触って確認するなど)。

・儀式行為
自分の決めた手順で物事を行わないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。

・数字へのこだわり
不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。

・物の配置、対称性などへのこだわり
物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。

<日常生活への支障がでていませんか>

強迫性障害は、誰もが生活のなかで普通にすること(戸締まりの確認や手洗いなど)の延長線上にあります。
「自分は少し神経質なだけ」なのか「もしかしたらちょっと行き過ぎか」という判断は難しいところです。
次のようなサインがあれば、専門の医療機関に相談することを考えてみてください。

・日常生活、社会生活に影響が出ている
手洗いや戸締まり確認に時間をとられる、火の元を確認しに何度も家に戻る結果、常に約束に遅れるといった弊害や、
日々の強い不安や強迫行為にかけるエネルギーで心身が疲労して健全な日常生活が送りにくくなってきます。

・家族や周囲の人が困っている
火や戸締まりの確認を家族にも何度も繰り返したり、アルコール消毒を強要するなど、周囲の人を強迫観念に巻き込むことも多くなります。
その結果、人間関係がうまくいかなくなっていきます。
自分では「病気というほど酷くない」と感じていても、家族や友人など周囲の人が困っている様子なら念のため受診を考えるのもいいかもしれません。

強迫性障害の治療法

強迫性障害の治療には、次の2つの療法を組み合わせるのが効果的だとされています。

<認知行動療法>

再発予防効果が高い「曝露反応妨害法」が代表的な治療法です。
患者さんが強迫観念による不安に立ち向かい、やらずにはいられなかった強迫行為をしないで我慢するという行動療法です。
例えば、汚いと思うものを触って手を洗わないで我慢する、留守宅が心配でも鍵をかけて外出し施錠を確認するために戻らないで我慢する、などです。
こうした課題を続けていくと強い不安が弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても大丈夫になっていきます。

<薬による治療>

患者さんの多くは、強迫症状や抑うつ、強い不安感があるのでまず抗うつ薬のSSRIで状態を安定させてから、認知行動療法に入るのが一般的です。
うつ病よりも高用量で、長期間の服薬が必要です。
最初は少量から始め、薬との相性を見ながら服薬量を増やしていきます。
SSRIは、ほかの抗うつ薬に比べると副作用は軽いものですが、服用を始めてから体調が良くない気がするなどの不安があれば、すぐに医師に相談するようにしましょう。

<アドヒアランスが重要>

アドヒアランスとは、患者さん自身が治療方針の決定にかかわることで「治そう」という意欲を高めて治療効果を上げようという考え方です。
強迫性障害の治療では、薬の服用量の多さに不安を感じがちです。
認知行動療法が辛くて嫌だと感じることもあるでしょう。
しかし、医師から十分な説明を聞き病気や治療のことが理解できれば、必要な治療なのだと納得できます。
なお、治療法は個々の患者さんに合わせて決定されます。
自分が不安に思うこと、治療法の希望などがあれば医師に相談してみましょう。

参照:「強迫性障害」(みんなのメンタルヘルス)
(http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_compel.html)

強迫性障害を扱った作品など

●名探偵モンク
参照:「名探偵モンクウェブサイト」
(http://www.monk-tv.jp/)

●memo
俳優の佐藤二朗が、自身の強迫性障害の体験をもとに映画初監督に挑んだ作品。

●アビエイター
参照:「アビエイター」(Wikipedia)